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世界がもし終わるなら

朝、父が娘を体操教室に送り届け、宇宙に関する本を読みながら 娘の次なる目標である9級に向けての練習風景を目に焼き付けているあいだ、 息子は区の全サッカーチームが争うトーナメントに出場するため 炎天下の下、朝から開催校である自分の小学校の校庭にいた。 スタメンではない彼は、クソ暑い中、出番は一日ないんだろうと 腹を決めていた矢先、コーチからいきなり声がかかった。 なんでも、意外にも初戦から大差で勝っていたため、コーチの計らいで 出場チャンスをもらえたわけだ。 結局、シュートは決まらなかったが、中盤でボールをもらって不器用にも ゴール前まで3回も自分で攻めこんだ。 出場時間、およそ15分。 今までは練習試合でも、何をしていいかどこにいたらいいかも分からず、 予期せず自分のところにボールが来てしまうと慌てて奇妙な動きを してしまったりと悔しい思いをしてきた彼。 本番のトーナメント戦という緊張感が息子を少しだけ進歩させたようだ。 父はそのシーンが観たかった・・・・・。 観たのは、また娘のでんぐりがえしだった・・。 父が娘を連れて、ようやく小学校での観戦に加わると、 チームが勝ち上がったため、相手とも接戦になっていた。 このギリギリの状況では、さすがに息子の出番は回ってこない。 はたして、ハーフタイムでチームがベンチに戻ってくると、 率先してメンバーに水筒やタオルを配るという、家庭ではまず見せない その素早く献身的な動作に、父の顔はほころんだ。 午前中の15分以外試合に出れず、 酷暑の中、炎天下の下ベンチでチームを 応援していた息子の鬱憤は、 その日夜遅くまで、父とのPK戦で発散された。 ボールが暗闇で見えなくなっても、 細っこい足はボールを蹴り続けた。 大人げない父は、ことごとくシュートを止めた。 世界がもし終わるのなら、今終わってほしい、 脚を蚊に食われた父の頭をふとそんな想いがよぎった。